ヴィヴィアン・ウエストウッドと介護ICT──システム導入も「反逆の精神」で考えろ

■介護業界にとって、ICTは便利なのか、それとも厄介なのか。ケアプランをデータで管理し、事業所間で連携できる「ケアプランデータ連携システム」の無料キャンペーンが6月1日から始まるらしい。対象は全事業所。なんとも太っ腹な話だ。でも、実際にこれを使うべきなのか? それとも、「そんなもんいらん」と突っぱねるべきなのか?

■そもそも、介護の世界は「紙文化」が根強い。紙の書類、ファックス、押印。どこか昭和の香りが漂う。でも、それを「時代遅れ」とは言い切れない。なぜなら、「手書きのほうが頭に入る」とか、「書類をめくる感覚が大事だ」とか、そういう「身体感覚」としての作業があるからだ。デジタル化は便利かもしれないが、それが「人間の手触り」を奪うのなら、ちょっと考えものだ。

■ここで、パティ・スミスの言葉を思い出す。「反逆することが自由ではない」。パンクの世界では、単に「既存のルールを壊すこと」が目的ではない。何を創るのか。どう変えるのか。そこに意味がある。そして、ヴィヴィアン・ウエストウッドは、その視点を「伝統を未来に取り入れる」という形で実践した。彼女は、「古いものを否定する」のではなく、「どう未来に活かすか」を考えた。

■介護業界も、ICTを導入するなら、この視点が必要なのではないか? ただ「紙をやめてデジタル化する」のではなく、「紙の良さを活かしながら、デジタルの利便性を取り入れる」。たとえば、ケアプランの基本情報はデータで共有する。でも、現場の職員が使うツールとしては、あえて「紙のノート」を残す。あるいは、利用者ごとの「個別ノート」を電子化するのではなく、写真や音声メモを活用して、より直感的な記録ができるようにする。「紙かデジタルか」の二択ではなく、「どう融合するか」が大事なのだ。

■これは、まさに「ブリコラージュ」的な発想だ。手元にあるツールをどう組み合わせるか。新しいシステムをどう活用するか。試しながら、最適な形を探っていく。

■結局のところ、「ケアプランデータ連携システム」は「使い方次第」だ。デジタル化すれば業務が楽になるのか? それとも、余計な手間が増えるのか? それは、現場の工夫次第。「ICTを導入すること」が目的になってはいけない。「より良いケアをするための手段」として、どう使うか。それを考えることが、これからの介護には求められているのかもしれない。

■「反逆することが自由ではない」。ヴィヴィアン・ウエストウッドのビジョンのように、「伝統を未来に取り入れる」ことが大切だ。介護のICT化も同じだ。「やるか、やらないか」ではなく、「どうやるか」。無料キャンペーンが始まる6月1日、それを考える良い機会かもしれない。そして、デジタルのことを、デジタルで考え、デジタルで書いている。まぁ、玄玄はこれ、しばらくやらないかな。。。藤渕安生

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